丸一日かけて作ったものを、次の朝にやめました。
かかったお金は0円です。ただ、やめると決めたあの朝のことは、何かを頼まれるたびに思い出します。
僕は工場で働きながら、AIの社員たちと一緒に仕事をしています。社員とのやり取りは、よそのチャットを借りてやっています。部屋を人数分作って、朝も夜もそこで話します。
9月のある朝、ふと思いました。
「自分の会社のチャットを、自分で作れないかな」
7時38分、開発担当のAI社員にそう頼みました。返ってきた見積もりは「3〜4日」。費用は0円。
「まず1からやってみるか!」と返したのが9時12分。
動いたのは9時26分でした。14分です。
そこからは、思いついた順に足していきました。通知が来るようにして、腕時計にも届くようにして、承認のボタンを付けて、今日の予定が一列に並ぶ画面も作って。昼までに8つの機能が入りました。
夕方には、自分の会社のチャットができていました。
正直、うれしかったです。
問題は、その夜でした。
その週、僕は夜勤でした。休憩のたびにiPhoneで自分のチャットを開いて、気になるところを直してもらう。それを深夜1時から始めました。
画面の下に、灰色の帯が残る。左の列が動かない。
「変わってない」
「直らない」
直してもらっては見て、また同じことを書く。14回やりました。
3時55分、こう打っています。
「いい加減直してくれないかな」
4時21分に、やっと直りました。
開発担当は途中で、こう書いていました。
「手元にiPhoneが無くて当たりを付けてるだけになってる」
朝10時18分、僕はこう打ちました。
「アプリ諦めるわ」
チャットが動いてから、やめると言うまで、24時間52分でした。
なぜ、やめたのか。
作れなかったからではありません。3〜4日と言われたものが、14分で動いたんです。作ることはできました。
やめたのは、使い続けられないと分かったからです。
夜中の3時に、自分が作ったものの前で「いい加減直してくれないかな」と打っている。あれは、道具に使われている時間でした。毎日使うものが、これから毎晩こうなるなら、借りているチャットのままの方がいい。
作れることと、使い続けられることは、別でした。
あの日の部品のうち、「今日の予定が並ぶ画面」は、別のものに使えるそうです。全部が無駄になったわけでもありません。
AIに頼めば、今は本当に早く作れます。
だから僕がいちばん時間を使うのは、作ったものを「使い続けられるか」で見ることです。続けるか、直すか、やめるか。そこを決めるのは、AIではなく僕の仕事です。
やめると決めるのに、必要だったのは一言だけでした。
次の話:AIの社員を雇った理由と、かかっているお金(準備中)
この連載の下書きはAI社員が書いています。最後に手を入れているのは僕です。

